informationコラム
派遣先が「 誤解しない 」「 誤解を受けない 」ための派遣先のコンプライアンス
~派遣労働者の特定を目的とする行為について~
1.派遣先による派遣労働者を特定する行為は 禁止 されています!
(1)具体的な禁止行為とは?
「派遣労働者を特定することを目的とする行為」とは、派遣労働者の候補者の中から特定の者を派遣労働者として派遣先が選択することを目的とする行為をいいます。また、 派遣先は派遣元事業主及び派遣労働者に事前面接などを要請することもできません。
(例)◆事前面接 ◆履歴書等の提出要請 ◆若年者に限ること ◆性別を限定すること ◆適性検査
(2)禁止の理由
労働者派遣制度は、派遣元事業主が雇用主としての責任を負い、派遣先は指揮命令のみを行う仕組みとして、様々な労働 者保護のルールを設けた上で認められています。
したがって、派遣労働者の職業能力については、雇用主としての責任を負う派遣元事業主がこれを評価し、派遣先が必要とする労働力かどうかを派遣元事業主が的確に判断して派遣を行うのが制度の基本とされています。それにもかかわらず派遣先が派遣労働者を特定すると、以下の問題が起こるおそれがあります。
・ 派遣先と派遣労働者との間に雇用関係が成立し、職業安定法で原則禁止されている労働者供給事業に該当する 可能性がある
・ 職業能力以外の要素である例えば容姿や年齢等に基づく選別が行われることによって、派遣労働者の就業機会が不当に狭められる等、労働者保護に欠ける事態を生じさせるおそれがある
2.「事前面接」と「事業所訪問」は違います!
(1)事前面接
労働者派遣法には「事前面接の禁止」という表現はありません。労働者派遣法で禁止されているのは、派遣先の「派遣労働者を特定することを目的とする行為」です。つまり、労働者を選別・特定する目的で、派遣先は就業前に派遣スタッフと会ってはいけないのです。
(2)事業所訪問
「職場見学」や 「事前打合せ」を、「事前面接」と区別しするために、一括して「事業所訪問」と呼びます。特定することを目的としないことを前提として「事業所訪問」することは可能です。
「職場見学」とは、派遣就労する前に、派遣スタッフが自発的に派遣先事業所を見学して、就業するのに適当であるかどうかを判断する目的で、派遣先事業所を訪問することです。「事前打合せ」とは、すでに就業が決まった(派遣スタッフが決定し派遣先への通知を行った後ということ)派遣先に、派遣就業前に業務内容などの確認をする目的で派遣先事業所を訪問することです。
派遣先と派遣元の間に業務内容について誤解が生じないとはいえません。また、派遣元が正確に業務内容を伝えたつもりでも、派遣スタッフが取り違えることもあります。そして、仕事を継続していく上で、派遣先の職場環境も重要な要素です。業務内容と派遣スタッフの能力がわかれば事足りる、というほどマッチングは単純ではありません。
ミスマッチを最大限に回避する意味でも、派遣スタッフ自身の目で職場環境を確認し、様々な疑問を明確にする事業所訪問は有効な手段です。短期の派遣ならばともかく、長期で派遣される場合、派遣スタッフの権利として事業所訪問を実行したいものです。
3.都道府県労働局における特定目的行為に係る指導状況
(1)相談・指導状況把握数 ・調査期間:平成 30 年度 ・指導件数: 100 件
(2)指導例
・派遣先Aは、労働者派遣に先立って、求職者の氏名、性別、生年月日等、業務に必要な技術や技能の水準に係る条件以外を記載している「プロフィールシート」と称する書類を提供することを派遣元に依頼していた。このことは派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為に繋がる恐れがあるため、改善するようAに対し文書指導を行った。
・求職者求職者Bは派遣元Cの担当者より派遣先Dへの事業所訪問を勧められ、担当者と共に事業所訪問を行った。しBは派遣元Cの担当者より派遣先Dへの事業所訪問を勧められ、担当者と共に事業所訪問を行った。しかし、事業所訪問に際し、事前にCの担当者からDの担当者にBの申し出の同意なく履歴書が渡されており、かし、事業所訪問に際し、事前にCの担当者からDの担当者にBの申し出の同意なく履歴書が渡されており、Dの担当者からその場で経歴等も聞かれ、後日、Bは不採用となった。労働者派遣契約の締結に際し、派遣先Dの担当者からその場で経歴等も聞かれ、後日、Bは不採用となった。労働者派遣契約の締結に際し、派遣先に対し、事前に派遣労働者となろうとする者に係る応募書類を提出して事前面接を行ったことは、派遣先によに対し、事前に派遣労働者となろうとする者に係る応募書類を提出して事前面接を行ったことは、派遣先による派遣労働者を特定することを目的とする行為に協力したと解される行為であるため、改善するようCに対しる派遣労働者を特定することを目的とする行為に協力したと解される行為であるため、改善するようCに対し文書指導を行った。併せて、派文書指導を行った。併せて、派遣先Dに対し労働者派遣に先立って履歴書を提出させ事前面接を常態的に行っ遣先Dに対し労働者派遣に先立って履歴書を提出させ事前面接を常態的に行っていることは、派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないよう努めていると解されないことから、ていることは、派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないよう努めていると解されないことから、改善するよう文書指導を行った。改善するよう文書指導を行った。 (※資料出所:厚生労働省職業安定局需給調整事業課調べ)(※資料出所:厚生労働省職業安定局需給調整事業課調べ)
4.事前の事業所訪問について派遣先が注意すべき点事前の事業所訪問について派遣先が注意すべき点
(1)事業所訪問の趣旨(就業前の事業所訪問を行う場合)
●派遣労働者等自らの判断の下に行われる事業所訪問であること
●事前の業務打合せ、又は仕事を受けるか否かを派遣労働者等自身が判断するこ
●事業所訪問は、派遣先の評価を受けるためのものではないこと
(2)事業所訪問の実施時に係る留意事項について
●派遣労働者等・派遣先・派遣元の三者が同席すること
⇒派遣元は、事業所訪問がル-ルに沿って適正に実施されるよう、また訪問した派遣労働者等を必要に応じてサポ-トするために同席します。なお、派遣労働者等の希望により本人がひとりで訪問することもあります。
●事業所訪問は、派遣予定のポストが一人の場合、1回につき一人の派遣労働者等に限られています。従って以下のようなことは派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為に触れるおそれがあります。
・次の「事業所訪問の実施後」に示すようなやむを得ない場合のほかは、派遣先はポストの数を超える回数の訪問を受けること。
・複数の派遣労働者等が行くこと。
●派遣先による説明は、以下のような派遣業務に関連した事項に限られ、それ以外についてはお控え下さい。
例)業務の具体的内容、必要な業務能力、職場環境(食堂、喫煙・禁煙状況など)、配置状況(人数、社員構成など)、出退勤手続、服務規律、福利厚生等
●派遣先による質問は、事業所訪問の趣旨にかんがみ、必要な業務能力を明確にご説明いただいた上で、それに該当するか否かを確認する目的の範囲内の以下のような事項に限られ、それ以外についてはお控え下さい。
例)派遣業務に関わる派遣労働者の業務経験、知識、技術等(なお、その質問に答えるか否かは派遣労働者等の判断に委ねられており、回答を強要することは出来ません。)
以下のようなプライバシーに関わる事項など、個人情報に関わる事項については、質問はできません。
例)住所、氏名、年齢、家族構成、家族の職業、学歴に関する学校名、前職の社名、退職理由、未婚・既婚、出産予定、出身地等
(3)禁止されている行為を行った場合に生じる問題点等
●労働者派遣法第26 条第7項・派遣先指針に違反するものとして、派遣先が行政指導の対象となります。
●事業所訪問等が原因で派遣労働者等が何らかの損害を被った場合、それを賠償する責任が派遣先に負わされるおそれがあります。
●派遣労働者との雇用関係が曖昧になり、場合によっては派遣先が雇用主としての責任を問われる等、派遣先と派遣労働者との間でいろいろな労働問題が生じるおそれがあります。
●派遣先は、派遣労働者が事業所訪問を行わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしないようご留意ください。