informationコラム
「高年齢者雇用安定法」改正の概要(1)
~70歳までの就業機会確保のために事業主が講ずべき措置(努力義務)等について~
高年齢者雇用安定法は、少子高齢化が急速に進行し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある誰もが年齢にかかわりなくその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境を整備する法律です。
1.高年齢者雇用安定法の改正の流れについて
2006年に、それまで努力義務だった「65歳までの定年の引上げ」「継続雇用制度の導入」「定年の定めの廃止」のいずれかの措置を講じることが義務(対象者限定可能)に変わり、その後、2013年には希望者全員に対して、65歳までの継続雇用制度の導入が義務付けられました。直近の厚生労働省の調査からは、99.9%の中小企業が高年齢者の雇用を確保していることが明らかになっています(2020(令和2)年「高年齢者の雇用状況」)。そして2021年4月に、65歳までの雇用義務に加え、70歳までの就労機会を確保することが企業の努力義務になりました。
2.2021年4月に高年齢者雇用安定法が改正された背景
今回の改正の背景には、「年金財源が悪化していること」「少子高齢化が進行するなか、働き手の不足が予想されること」に加え、働いている60歳以上の9割近くが70歳以上まで働きたいという「健康で就労意欲の高い高齢者が増えたこと」があげられます。(内閣府「令和2年版高齢社会白書」)
3.高年齢者雇用安定法の改正項目
①と③は2013年の改正とほとんど同じ文言で、違うのは65歳が70歳に変更された点です。改正前は、ほとんどの民間企業一度定年を迎えた社員に対して、1年契約の嘱託雇用などの継続雇用を設けていました。②は、継続雇用が70歳まで伸びたものですが、違う点は、事業者同士が契約すれば、他社での継続雇用が可能となった点です。改正前は、子会社や関連会社などの「特殊関係事業主」でしか認めていませんでしたが、継続雇用先が拡充されました。例えば、A大学で定年まで働き、B大学で70歳まで働くことでもよいのです。
①②③は「雇用」という形で働く機会を与え、今回追加された④と⑤で、雇用ではない形で「就業」の選択肢を広げたことが特徴。